2014年2月13日木曜日

Iguana TeX で日本語を通す

Powerpoint に TeX の数式を入力するアドインとして、IguanaTeX があるが、これだと dvi から png への変換が dvipng コマンドのために日本語に対応していない。

この場合は、Imagemagick の convert を使うように修正すると日本語を通すことができる。
以下は作業手順。

1. w32tex を
http://did2memo.net/2012/04/23/easy-latex-install-windows-201204/
にある方法でインストール。
(他の方法でも、パスが通っていればもちろん問題ない。)

2. Imagemagick をインストールする
今回は、
C:\Program Files\ImageMagick-6.8.8-Q16
にインストールされたので、このディレクトリに行って convert.exe を convert2.exe にコピーする。
(Windows 自体にも convert コマンドがあるので、衝突を避けるため。)

3. IguanaTeX をインストールする
このときに、ソースも一緒にインストールすること

4. IguanaTeX のマクロを修正する
C:\Program Files (x86)\IguanaTex\IguanaTex64.pptm
を「ドキュメント」などにコピーして、IguanaTex64-platex.ppam などとリネームする。
これを powerpoint で開いて、「表示」→「マクロ」→「NewLatexEquation」を選択して、「編集」を押す。
VBA の編集画面になったら、左の方にある「Macros」を開いた後に、「編集」→「検索」で対象を「カレントプロジェクト」にして、"tight" で検索する。

tight が検索されたところの少し前に
retval& = Execute("latex -interaction=batchmode """ + FilePrefix + ".tex""", TempPath, debugMode)
という行があるので、これを
retval& = Execute("platex -interaction=batchmode """ + FilePrefix + ".tex""", TempPath, debugMode)
に修正する。
また、tight が検索されたところの少し後に
    Execute "dvipng " & DviPngSwitches & " -o """ & FilePrefix & ".png"" """ & FilePrefix & ".dvi""", TempPath, debugMode
とあるのをコメントにしておいて、その代わりに
   Execute "convert2 -debug ALL -density 600  -trim -transparent white """ & FilePrefix & ".dvi"" """ & FilePrefix & ".png""", TempPath, debugMode
を追加する。
ここまできたら、保存して、VBA の編集画面を閉じる。

5. アドインの保存
Powerpoint の「ファイル」→「名前を付けて保存」でファイルの種類を *.ppam にして、IguanaTex64-platex.ppam として保存する。

6. アドオンの登録
Powerpoint の「ファイル」→「オプション」で「アドイン」を選択して、「管理」のところを「COMアドイン」から「PowerPointアドイン」に変更して「設定」を押す。
「新規追加」から IguanaTex64-platex.ppam を追加する。


これで一通り作業は終わりなので、あとは通常通り IguanaTeX を使えば、日本語が通るようになる。
ただし、ImageMagick の convert が遅いようなので、PC のスピードによっては、日本語になるまでに10秒程度待つこともある。

うまくいかないときには、IguanaTeX のdebug にチェックボタンを押して実行して、作業途中で一次領域のC:\Tempを参照すると、情報が得られるときがある。


2014年2月7日金曜日

双対定理における実数空間の完備性の意味

双対定理は、数理最適化の定理の中でも極めて重要な定理であるが、双対定理を示すうえで根幹となるのは、実数空間の完備性である。

ここでは、簡単に双対定理のためになぜ実数空間の完備性が必要か、見てみることにする。

非線形最適化問題の双対定理の証明は、手元にある和書だと見つからなかったが、洋書の場合には、

"Foundations of Optimization" by O. Guler

の定理11.15である。この証明で使うのが、定理11.14のConvex Transposition Theoremであり、これは Farkas の Lemma を非線形最適化問題に一般化したものである。

定理11.14 に使われるのが、分離定理である。分離定理の証明については、日本語でも書かれており、例えば、

凸解析と最適化理論, 田中兼輔

に詳しい。以降の定理番号は、「凸解析と最適化理論」のほうに準ずるとして、分離定理は定理5.4に証明されている。

この分離定理は、「ユークリッド空間の閉凸集合とそれに含まれない点があるときには、それらを分離する超平面が存在する」という内容だが、この証明に用いられる定理5.1では、「ユークリッド空間の閉凸集合とそれに含まれない点があるときには、含まれない点から見た閉凸集合の最小距離の点は、ただ一つであり、内積による必要十分条件がある」が示される。

この証明には、ユークリッド空間が完備であることが必要となっており、n次元ユークリッド空間が完備であることは、定理2.2で1次元ユークリッド空間の完備性から示される。
そして、最終的には定理A.2.3によって、実数空間の完備性が、limsup などの定義から直接的に示される。


他にも、ノルムの連続性が効いているが、「実数空間の完備性」と「ノルムの連続性」は、 epsilon-delta の定義から証明できることになる。

この流れは大まかな流れであるが、大まかな流れで見てくると、双対定理という重要な定理も epsilon-delta の定義までさかのぼることができるし、その中でも「実数空間の完備性」というところを経由しているのがわかる。