2014年2月7日金曜日

双対定理における実数空間の完備性の意味

双対定理は、数理最適化の定理の中でも極めて重要な定理であるが、双対定理を示すうえで根幹となるのは、実数空間の完備性である。

ここでは、簡単に双対定理のためになぜ実数空間の完備性が必要か、見てみることにする。

非線形最適化問題の双対定理の証明は、手元にある和書だと見つからなかったが、洋書の場合には、

"Foundations of Optimization" by O. Guler

の定理11.15である。この証明で使うのが、定理11.14のConvex Transposition Theoremであり、これは Farkas の Lemma を非線形最適化問題に一般化したものである。

定理11.14 に使われるのが、分離定理である。分離定理の証明については、日本語でも書かれており、例えば、

凸解析と最適化理論, 田中兼輔

に詳しい。以降の定理番号は、「凸解析と最適化理論」のほうに準ずるとして、分離定理は定理5.4に証明されている。

この分離定理は、「ユークリッド空間の閉凸集合とそれに含まれない点があるときには、それらを分離する超平面が存在する」という内容だが、この証明に用いられる定理5.1では、「ユークリッド空間の閉凸集合とそれに含まれない点があるときには、含まれない点から見た閉凸集合の最小距離の点は、ただ一つであり、内積による必要十分条件がある」が示される。

この証明には、ユークリッド空間が完備であることが必要となっており、n次元ユークリッド空間が完備であることは、定理2.2で1次元ユークリッド空間の完備性から示される。
そして、最終的には定理A.2.3によって、実数空間の完備性が、limsup などの定義から直接的に示される。


他にも、ノルムの連続性が効いているが、「実数空間の完備性」と「ノルムの連続性」は、 epsilon-delta の定義から証明できることになる。

この流れは大まかな流れであるが、大まかな流れで見てくると、双対定理という重要な定理も epsilon-delta の定義までさかのぼることができるし、その中でも「実数空間の完備性」というところを経由しているのがわかる。

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